労働基準法施行規則改正や電子帳簿保存法改正など、日々新たな法改正への対応が迫られていますが、多くの中小企業では準備期間やリソースの確保が難しいのが現状です。
法改正をひとつのきっかけとして、業務改善やシステムの入れ替えを検討しながらも、何から始めたらよいのかわからないということも少なくありません。
本コラムでは、法改正への対応という機会を上手く活用しながら、並行して理想的なデジタル化を進められた事例をご紹介いたします。
この機会に法改正への対応という目先の課題解決ではなく、会社としてのなりたい姿、あるべき像について検討し、現場を巻き込んだ業務改善、デジタル化を進めてみませんか?
運送業のデジタル化事例
業種:運送業
事業規模:従業員80~100名/売上約10億円
課題:
・運送業界の例にもれず、古いシステムや多くの紙が存在し情報管理が煩雑化していた
・アナログ管理が主となるため、業務の属人化が発生。とくに勤怠管理および給与計算では、月次対応による工数肥大がみられた
・業務効率化や包括的なペーパレスなど、デジタル化を進めていきたいという意向はありつつも、何から着手すべきか優先順位が決まっていなかった
取り組み内容:
・勤怠管理のデジタル化
・給与明細の電子化
取り組みのポイント:
システム導入の前段階として、会社としてのあるべき姿やなりたい姿について議論を重ね明確化。なりたい姿を基準に今後のシステム構想や会社としての在り方を検討し、業務改善やデジタル化を進める優先順位の決定を行った。
結果:
・クラウド型勤怠管理システム導入により、多様な働き方を考慮しながらも勤怠管理やそれに伴う作業時間の削減した。
・スマートフォンなど、各自の端末から給与明細を確認することができ、月次で発生していた紙の給与明細発行作業が不要となり、空いた時間を他業務へ充てることができている。
中小企業におけるデジタル化成功のカギ
デジタル化と聞くと、会社全体に大きな変革を与えなければならないと感じてしまうこともあるかもしれません。しかしながら、中小企業のデジタル化成功の鍵を握るのは次のような3点です。
①:自社に見合ったシステム・ツールの選定
デジタル化のゴールはシステムやツールの導入ではありません。現状のアナログな手作業をやめるためにシステム導入が必要な場合もありますが、業務量や頻度を鑑みて重要度が高くない業務へシステムを入れてしまってはコスト高を招きかねません。自社の規模や業態、業務フローに合わせて、最適な手段を選定することが改善の一歩となります。
②:スケジュール管理
大きな目標を立てたものの、実現までに期間を要し頓挫してしまうことも少なくありません。社内の運用体制を構築し、実装までを含めたスケジュール管理を行うことが重要です。
③:外部を上手く活用する
①や②を考えたり、判断するうえでITに関する知見は必要不可欠ですが、そのリソース不足に多くの企業が頭を悩ませています。その場合は、たとえばコンサルティングサービスを依頼し意思決定までの時間や工数を短縮したり、アフターフォローの手厚いシステム事業者を選んだりするなど、組織外のリソースや知見を上手く活用し、頼ることが大切です。
事業規模に応じて、何をしたいのか、何ができるようになったら楽になるかを見定め、優先順位をもとにできる部分から着手していくことがデジタル化成功へのカギとなります。