多くの企業がツール導入による業務改善効果を実感できていない
会社として業務の効率化を考えた際には、システムやツールを導入することにより業務効率化を図ることが一般的になっています。
また、2020年に発生した新型コロナウィルス感染拡大の際にはオフィスでの密集を避けるための取り組みや在宅勤務の実用を推し進めるために短期間にたくさんのデジタルツールを導入しなんとか定着してきたという企業も多いのではないでしょうか?
事務処理や手続きなど、パソコンを使用した業務が多い管理部門や間接業務を担う部署ではツール導入による業務効率化の効果はもちろんですがそれに伴う影響も出やすく、新たなツールの導入期には実務において現場社員にもある程度の負担感が必ず伴います。
実際に運用するまでは労力を割いていたにもかかわらず、運用が開始すると管理者側がそこで満足してしまうケースも多くみられます。ツールを導入することで、すぐに業務効率化の効果が得られる場合もありますが、長期的かつ最大限にツールを活用するためには導入の目的や背景、どのような計画で効率化を実現するのかを導入段階でしっかりと検討することが大切です。
それを現場と共有しながら進めていくことで間接部門の現場でも効果が実感でき、負担感の解消と業務改善意識の醸成につながっていきます。
(参考:企業におけるIT投資の考え方とは?)
「ツールを入れる=業務改善」ではないのが実態
実際に当社が事務系職種のビジネスパーソン553名に対して行った、「働き方改革関連法の施行や新型コロナウイルス感染症拡大以降に起きた職場環境の変化に関するアンケート調査」によると約65%が「業務効率化のために職場になんらかのツールや制度の導入があった」と回答しているものの、その生産性については「変わらない」または「下がった」「大いに下がった」と効果を実感していないという回答が71.3%にものぼっています。
新型コロナウィルス感染症拡大などの急を要する施策の際には、最初のステップとしてまず新たな仕組みを構築し、生産性を維持することを目標としても問題ありません。しかし次のステップでは、長期的な活用を意識することで導入前よりも高い生産性を実現することができ、費用対効果を高めることにつながります。
また、「あなたの職場の働き方改革・業務改善を加速させるために必要と思われる環境は何ですか」という質問についても「システム・ツールの導入」が34.5%であるのに対し、「会社としての方針指示」が43.4%、「他部署・社員間の共有や連携体制」が36.3%と方針や組織体制、仕組みなどのソフト面の強化・構築が上回る結果となっているのが現状です。
業務改善を進めるにあたってツールを導入して終わりではなく、効果や長期的な活用を意識して会社としての方向性や方針、連携体制を整えることが重要です。
「何のためにツールを導入するのか」理想を現場と共有する
これらの現場で働く方の意見を見てみても、ツールを導入するだけでは効率化を実現することは難しく、効果を感じられていないのが実態です。
ツールの導入はあくまでも手段に過ぎないということを意識しておくことが大切であり、ツール本来の力を発揮させるためには、そのツールを使用することにより何を実現したいのかを予め具体的にイメージしておき、それを管理側と現場側双方が共通認識とした上で状況確認や効果測定を実施していく必要があるのです。
【事前検討事項 例】
・なぜそのツールを入れることになったのか
・どの部署・どの業務を効率化できるのか
・効果、影響の出る部署はどこなのか
・どの程度の業務改善効果を期待するのか、見込めるのか
・いつまでにどの程度の活用を想定しているのか
(現状使っているものの廃止時期や担当部署の変更時期、ルール変更時期など)
実際にツールを操作して処理をする人、それを管理する人、そのデータを見る人と立場によってもツールとのかかわり方は様々です。一部の立場から効率化を推し進めるのではなく、課題を多面的に考えることで全体最適を意識し、現場社員と一緒になって進めることが業務効率化の効果をより大きくすることにつながっていきます。
これからツール導入等による業務改善を検討されている場合やすでに実施している業務改善やツール導入による効果があまり感じられないという場合は、改めてその目的や理想を整理してみてはいかがでしょうか?
下記のコンテンツでは、ツール導入や業務改善の影響を受けやすい間接部門が陥りやすい課題とその解決ポイントを解説しています。是非、今後の業務改善や業務効率化の検討材料としてご活用ください。