中小企業におけるシステムの傾向
中小企業と大企業のバックオフィスで特に大きな差が出る領域が、社内で利用する情報システムです。
経理部門や総務人事部門と比べて、情報システム部門はある程度の企業規模でなければ専門部署を持てない場合が多く、社内のパソコンに詳しい人がひとりで担当していたり、総務や営業の仕事を兼務しながら担当していたりというケースがほとんどです。
そのため、社内で使用している情報システムは、コピー機などで昔からお付き合いのあるOA機器の販売会社に薦められるままに導入している会社を多く見受けます。
昨今これほどクラウドが進化し、テレビCMでも流れているような便利な業務系SaaS製品(ソフトウェアをクラウドサービスとして提供するもの)がたくさん存在する時代に、いまだに昔ながらのオンプレミス製品(ソフトウェアを自社で保有し運用するもの)を使い、使い勝手の悪いシステムに高い保守費用を払い続けている事例が散見されます。
システム導入時のよくある"悲劇"
一方、同じ中小企業でも、ITベンチャーは大手企業よりもDX化が進んでいます。
システムに明るいデジタルネイティブ世代が、SNSなどで情報を得ながら自社に合うSaaS製品を見繕ってきます。そして、ツールが自社の業務フローに合わない場合は、システムをカスタマイズせず、業務フローを変えて上手に使っています。
こういった柔軟な動きができれば、思った以上に低コストで使いやすいシステムを使用して業務ができるのですが、一般的な中小企業の場合では、なかなかそうはいかないのが現実です。
例えば、従業員が最も利用する勤怠管理システムひとつをとっても、SaaSは10製品以上存在します。システムのわからない社員がその中から自社にあったサービスを選択することは非常に困難なので、自然と今まで付き合いのある業者に相談してしまいます。業者は業務のフィット&ギャップなどを検証せず、自社が取り扱っている製品を紹介してきます。
そしてそのまま契約をしてしまい、いざ使ってみると今までのやり方とまったく合わず、現場からは「急に言われても今までのやり方を変えられない」という声が上がり、結局はせっかく導入したSaaS製品からExcelなどにデータを落として、合わない部分を手入力している…なんてこともあります。
一見、新しいSaaS製品を使っていて、進んでいるように見えるけれど、従業員からは「使いにくい」という声が多く、よく調べて見ると実はExcelの処理だらけという”悲劇”が中小企業では多々発生しているのです。
正しいDX化の進め方
では、正しくDX化を進めるにはどうすればよいのでしょうか。
まずは、今行っている業務・事務のやり方、業務フローを整理することからはじめます。そして、プロセスごとにかかっている工数を計測して、どこに多くの時間がかかっているのか、どの処理がボトルネックになっているのか、問題の箇所を特定します。
その上で、本来あるべき業務フローを策定し、それに合うSaaS製品を探します。ポイントは、現在行っている業務フローではなく、本来あるべき正しい業務フローに合った製品を選定することです。
製品選定は出入り業者に頼まず、導入するシステムの売れ筋上位3製品程度に直接WEBサイトから問い合わせます。「当社の業務フローはこうだけど、貴社のシステムを使うとどのようになりますか」と直接話を聞いて、自社の業務に一番近いシステムを選択してください。
(参考:バックオフィスのDX推進に必要なこととは)
また、SaaS製品はできるだけ標準機能で使うのが賢い利用方法です。どうしても業務に合わない場合は、システムをカスタマイズせずに業務フローを変えられないかを検討してください。
システム移行を完遂させるポイント
ただし、新しいシステムに移行することは多くのエネルギーが必要な作業です。これまでのやり方を変えたがらない社員がほとんどでしょう。システムだけでなく、業務フローまで変更するとなると社内からの抵抗は相当大きくなります。
大事なことは、経営トップがなにがあっても最後までやり切れるプロジェクトの責任者を任命することです。そして、システムが無事移行できた際には、最大の賞賛とインセンティブを与えてください。
自社に合った情報システムの運用、それに合わせた「あるべき姿」の業務フローの実現は、必ず投資以上の見返りをもたらすことでしょう。
バックオフィスのDX化におけるシステム導入の際は、DX化の陥りやすい落とし穴に陥らないために注意すべき点はいくつかございます。
下記資料ではバックオフィスのDX化に際して注意が必要なことについてご紹介しております。ぜひ、ご活用くださいませ。