M&Aによって複数の企業が統合される場合、異なる業務プロセスや組織文化を統一することは容易な課題ではありません。しかし、業務統合を適切に進めることで、統合後の効率性と企業競争力の向上を実現することができます。
特にバックオフィスのような管理部門の統合においては、安定した経営データの可視化やグループ各社が事業に集中できる環境の構築にもつながります。
(参考:グループ経営における機能集約の必要性とは?~経理~)
独自業務を縮小し、業務標準化を目指す
統合前は、各社独自の管理部門が存在しており、異なる業務プロセスやシステムが利用されているケースがほとんどでしょう。
各社各様の運用が残ったままの場合、会社間を越えた情報共有や円滑な意思決定が困難になるとともに、業務の属人化や重複業務が発生し、非効率的な業務体制になってしまいます。
そのため、経営の基盤を担う管理部門を統合することは、経営基盤の安定化につながり、グループ経営を加速させる一助となります。
業務統合の手法のひとつに「業務標準化」がありますが、そのためには、各個社で運用されている異なった業務プロセスを統一化し、なるべく個社特有の業務を縮小する努力が求められます。
特に管理部門のようなバックオフィスは、他の部門に比べて定常的な業務比率が高く、業務標準化の効果を創出できる可能性が高い部門といえます。
そのためにも既存業務やシステムを可視化し、課題解決後のあるべき業務フローを設計し業務標準化を図ることで、業務の削減や効率的なリソース配分による生産性の向上とコストの最適化が期待できるでしょう。
(参考:業務標準化のために押さえておくべき4つの要素)
システム起点の「Fit to Standard発想」へ
また、システム統合も業務統合の一環として重要な要素です。各社がそれぞれ異なる業務システムを使用している場合、経営データの把握、共有にタイムラグが発生し、円滑なグループ経営を妨げかねません。システム統合によって一つのシステム基盤を構築し、情報の一元化と効率的な業務プロセスの実現を目指すことが重要です。
(参考:失敗しないシステム統合とは?成功に欠かせない「2つの鍵」)
システム起点で標準化を図る上では「Fit to Standard」という考えがあります。これは、従来のようなアドオンや個別開発などを行わず、システムの標準機能を最大限利用することで短期間かつ低コストでシステム導入につなげることです。また業務プロセスも導入するシステムに適応させることで、業務とシステムの両面から標準化を図ることができます。
統合後の業務統合は一過性ではなく、変化や課題の発生に柔軟に対応しながら改善を継続させていくことが大切です。このように経営基盤を担う管理部門を効果的に業務設計することで、経営の透明性を高め、持続的な成長につなげるシナジー創出につながります。